おかげさまでありがとうございます。

 今月は布施と帰依の心でしっかりと功徳を積んでいただきたいと思います。
 功徳というのは自分の為ではなく、神仏の為、他者の為になる事をする事です。功徳の積み方というのは色々あります。先祖供養ももちろんその一つだと思います。先祖供養の行き届いてない家で、家の中が落ち着いてる家は無いと言っても過言ではありません。それほど先祖供養というのは、有り難く大切なものです。今月は彼岸月でもありますので、しっかりと供養していただきたいと思います。
 しかし、先祖供養というのは自分の家の事です。自分の家の事をするのは当たり前の事でもあります。全く自分には関係ない事の為に尽くせる心、たとえそれが相手に自分がしたとわからなくても相手の為になれば良いと思って出来る心が、見返りを求めない布施の心であり、大きな功徳になるのだと思います。托鉢という修行があります。現在では見かける事も少なくなりましたが、私が幼い頃には、鉢を手に持って食べ物や金銭をいただく托鉢の行をされておられる方がいらっしゃいました。この托鉢の行についてお釈迦様の有名な話があります。ある日、弟子を連れて托鉢に出かけられたところ、道が二つに分かれていたそうです。一つの道は貧しい村へ、もう一つの道は豊かな村へ続く道でした。貧しい村へ通じる道を進まれるお釈迦様に、弟子は道を間違えていると言ったそうです。その時、お釈迦様は、「道を間違ってはいません。貧しい村へ行くのです。貧しい人は人に施す事が無いから、いつまでも貧しいままなのです。貧しい中から米一粒でも布施をして功徳を積むならば、その人達はそれによって苦しみから解放されます。布施というのは、量の多寡ではありません。貧しいものほど布施をしなければならないのです。」と弟子に説かれたそうです。この話からもわかるように、布施や帰依というのは余裕があるからする、というものではありません。みなさんの無償の慈悲の心でするものです。人生の運を開くのは功徳の力しかないと思います。どうか、みなさんの布施と帰依の心でしっかりと功徳を積んでいただきたいと思います。

 おかげさまでありがとうございます。

合掌

浅田 芳順

(令和五年八月一日 法話より)